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☆「モズの穴」

もずの穴(18) 元川 芹香

確かに君は、ボクよりは小さいなと思ったけどバカになんかしてない。聞くけど、小さいことの何がいけないの?」

「何にも悪くないねえ。だから、白チンでも悪くねえ」 「あのねぇ…」 山猿はボクの手をつかみ、神社の拝殿の中に連れて行く。

「勝手に入っていいの?」 「おれんちだから、いいに決まってるだろ。これ見ろ。これが、かの新田義貞だ。知ってるか?」

山猿は右側天井下の壁にかかった古い絵の中の武将を指差す。「この絵は、あの鎌倉攻めの時に黄金の太刀を落として、荒れ狂う稲村が崎の海を沈めたっていう場面だね」

「おいおい、白チン本当に小学生?」 ボクが鎌倉から来たことはしばらく伏せておくことにして、「なに、歴史が好きなだけだよ。どうしてこの絵があるの?」

「義貞の子供が戦に破れて、ここらへんに流れたとか。この神社にもゆかりがあるんだそうだ」 「それじゃあ、神社の鳥居のマークは新田義貞の家紋?」

「その通り!オマエは賢いんだな」 これほど褒められると、余計言えなくなった。反対側の壁には、ジージが言っていたハヤブサが松の木に泊まる絵。これは稲村ケ崎の絵よりもずっと古そうだ。

「おお、それはハヤブサ。このあいだオマエが見た鼻ヶ岳は棲息地なんだ。昔は神の使いとされていたんだって。実際に見たことないけど、こんなのが空を飛んでいたらカッコイイだろうな」

ハヤブサが今にも飛び出てくるんじゃないかと思うくらい、山猿はその色あせた絵をじっと見ていた。他にも新しそうなパネル写真が数点。中でも、龍神祭という題が記された写真に目がとまった。

「ねぇ。これって、どういうお祭なの?」 「これか?これは最近復活した祭りだ」 <続く>

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