☆ 「モズの穴」
もずの穴(22) 元川 芹香
ジージの地図には、青龍ヶ池への道は神社の裏手に細い近道があると記されている。鳥居をくぐり境内の裏から続く細い獣道を歩いた。昼間というのに薄暗くジメジメとした道。
ガサガサガサガサと、物音がした。ボクは、フジ子さんのお守り思わずを握りしめた。「やっぱり行くんだな」 後ろを振り返るとヤツがいた。
「山猿ぅ~」 ボクはなんだかホッとした。「きょうは、あんまり雲行きが良くないぞ」 嬉しすぎて、山猿のいった言葉が耳に入ってこない。
「今日も創立記念日?」 「バカ言え!今日は日曜だ!」 「そっか、昨日ごめんね。早くもずを取りたかったから、あんなことしちゃった」 「なんのことだ?」
山猿は口笛を吹きながら、ぼくの前でしきりに近くの草のみを摘んでいる。かと思ったら、「目標、白チン。襲撃開始!」 と、イガイガ付いた実をぼくに向かって投げつけてきた。
「もう、痛いよ!」 ボクのポロシャツにいがいがの実が沢山張り付いている。「わはっはっはっは。バカ草銃撃の威力を見たか!今から、オマエはバカ人間だ!」
なんてヤツだ。「ずるいぞ!山猿ごときに負けるもんか!」 そうこうして歩いていると、いつの間にか青龍ヶ池に辿りついていた。
池は透きとおってはいないけれど、青みがかった薄緑色。池の回りには艶やかな緑色のブナの木々が生い茂り、中でも一本ひときわ太く大きな大木が目についた。
「すごく神秘的な池だね」 「そうか?ただの沼池だよ」 ボクは近くにあった切り株で出来たベンチに座り山猿を呼ぶ。「山猿、いいものを持って来たんだ!」
早速リュックから包みを取り出しその一つを渡すと、すぐ山猿は開いた。「味噌おにぎりか?オレ、これ大好きなんだ」 山猿は嬉しそうにかぶりつく。そして、ぼくもがぶり。
ボクの学校の校庭が四つ、五つ入りそうな大きな池のそばで食べる、今日のおにぎりはことのほか美味しい。 <続く>
ジージの地図には、青龍ヶ池への道は神社の裏手に細い近道があると記されている。鳥居をくぐり境内の裏から続く細い獣道を歩いた。昼間というのに薄暗くジメジメとした道。
ガサガサガサガサと、物音がした。ボクは、フジ子さんのお守り思わずを握りしめた。「やっぱり行くんだな」 後ろを振り返るとヤツがいた。
「山猿ぅ~」 ボクはなんだかホッとした。「きょうは、あんまり雲行きが良くないぞ」 嬉しすぎて、山猿のいった言葉が耳に入ってこない。
「今日も創立記念日?」 「バカ言え!今日は日曜だ!」 「そっか、昨日ごめんね。早くもずを取りたかったから、あんなことしちゃった」 「なんのことだ?」
山猿は口笛を吹きながら、ぼくの前でしきりに近くの草のみを摘んでいる。かと思ったら、「目標、白チン。襲撃開始!」 と、イガイガ付いた実をぼくに向かって投げつけてきた。
「もう、痛いよ!」 ボクのポロシャツにいがいがの実が沢山張り付いている。「わはっはっはっは。バカ草銃撃の威力を見たか!今から、オマエはバカ人間だ!」
なんてヤツだ。「ずるいぞ!山猿ごときに負けるもんか!」 そうこうして歩いていると、いつの間にか青龍ヶ池に辿りついていた。
池は透きとおってはいないけれど、青みがかった薄緑色。池の回りには艶やかな緑色のブナの木々が生い茂り、中でも一本ひときわ太く大きな大木が目についた。
「すごく神秘的な池だね」 「そうか?ただの沼池だよ」 ボクは近くにあった切り株で出来たベンチに座り山猿を呼ぶ。「山猿、いいものを持って来たんだ!」
早速リュックから包みを取り出しその一つを渡すと、すぐ山猿は開いた。「味噌おにぎりか?オレ、これ大好きなんだ」 山猿は嬉しそうにかぶりつく。そして、ぼくもがぶり。
ボクの学校の校庭が四つ、五つ入りそうな大きな池のそばで食べる、今日のおにぎりはことのほか美味しい。 <続く>
タグ:モズの穴