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☆「モズの穴」

もずの穴(13) 元川 芹香

ちょっと、視線を逸らしたらヘンテコな形の小山が見えた。「なんだ、あれは?」 「あれか?あれは八木の鼻ヶ岳さ。巨人が寝そべった時の鼻の形に似ているだろ?」

「えっ?」 いつの間にかぼくの横には真っ黒に日焼けした少年が坐っていた。「オマエ、ここらの子じゃないねーな。学校始まったのに、何しに来たんだ?」

馴れ馴れしく声かけて、失礼なことを言うのが田舎の人間だ。「君には関係ないだろ」 ボクはひと睨みしてやった。

「オマエ、白っちいからだのわりには、でかいポコチンだな」 「それも、関係ない… いや、君のはミニウインナーだ」

「うるせー!おれは誉めてやってんだ。けなし返すヤツがあるか」 「それは失礼。では、さようなら」 そういって立ち上がり、回りをみたら残っていたのはボクたちだけだった。

この山猿のせいで結局二つの湯船しかつかれなかったが、さっさと露天風呂を退散することにした。男湯の前でフジ子さんは仁王立ちで待っていた。

「もう、惇ちゃん遅かったじゃない。風呂の中で溺れているんじゃないかって心配してたのよ。さぁ早く食堂に行きましょ」 ボクは、フジ子さんが作った 「味噌おにぎり」 が食べたかったが。

「折角ここに来たんだから、美味しいもの食べて帰ろうよ」 フジ子さんが言う。また、あの山猿に出くわしたらたまったもんじゃない。「ボクの美味しいものは味噌おにぎりです」

「やっぱり、あなたは幸恵の子供ね。頑固なとこなんかがそっくり」 あれ、ジージは?… 少し離れたソファーから、片手にカップ酒を持ち真っ赤な顔してぼくに手を振っている。

よほど、酒風呂が恋しかったのかな。 <続く>

タグ:モズの穴
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