☆エッセイ「耳の中の妖精」
耳の中の妖精 (四) 芹香ママ
「でもね、若い頃はチャ・チャ・チャだったそうだよ」 同じような、もう、一人が言う。「なに、それって」 始めの妖精に聞き返した。
「茶色い服ばかり着てたから、チャ・チャのチャなの!」 「そう言えば、その頃チャ・チャ・チャのリズムが流行ってたんだって」 また、別の妖精が、「マンボの踊りも楽しかったそうだよ」
さぁさ、踊ろうヘイ・マンボ。楽しいリズムで、チャッチャッチャー。三人で踊り始めたから、さあ大変。頭はガンガン 『ああッ、やめてェ!やかましい!』 と叫んだ。
途端にピタッと止まって、もとの静寂が戻った。やれやれ、今度こそ眠ろうと 「ヒツジが一匹、ヒツジが二匹……」 数えて七十八匹目になると、また、妖精たちの会話が始まりだした。
「あのね、ここの家主ったらここ一年ほど前から、ド派手な赤やピンクばかり着るようになったの。どうしてか知っている?」 最初の妖精が言う。すかさず二番目 「ねぇ、どうしてなの」
聞かれた最初の妖精が、「二年くらい前のことね。麗しのカリスマ歌手っていわれた美輪明広が講演に来たときに聞いたそうよ」 と、家主がたまたま見たショウで聞いた話を開陳した。
『年を重ねると、どうしても肌がくすんで冴えなくなる。薄汚いボロ雑巾のような色を着るから、まるでドブ鼠ね!若いときならシックで通るけど。もっと明るい色でカバーしなけりゃダメよ』
と鈴をころがすような声で、高らかにのたまったって。その時の彼女?のいでたちは、輝くような金髪で、三宅一生がデザインしたという黄色いアコーデオン・プリーツのドレスでね。
話聞いていた、二人目の妖精が、さもあきれ気味に 「それにしても、わが家主、素直と言えば聞こえがいいけどうかばかに単純な人間だね」
「ま、いいじゃない。そのうち世の中は、きっと高齢者だらけになるんだからさ。汚い灰色じゃ気が滅入って堪らないよ。カラフルな色があふれれば、きっと平和になるかもね」
と、三人目がとりなし顔で言う。総砂漠化で緑が失われた地球上に、明るい色彩が増せば少しは救われそうな気もしてきた。 <つづく>
「でもね、若い頃はチャ・チャ・チャだったそうだよ」 同じような、もう、一人が言う。「なに、それって」 始めの妖精に聞き返した。
「茶色い服ばかり着てたから、チャ・チャのチャなの!」 「そう言えば、その頃チャ・チャ・チャのリズムが流行ってたんだって」 また、別の妖精が、「マンボの踊りも楽しかったそうだよ」
さぁさ、踊ろうヘイ・マンボ。楽しいリズムで、チャッチャッチャー。三人で踊り始めたから、さあ大変。頭はガンガン 『ああッ、やめてェ!やかましい!』 と叫んだ。
途端にピタッと止まって、もとの静寂が戻った。やれやれ、今度こそ眠ろうと 「ヒツジが一匹、ヒツジが二匹……」 数えて七十八匹目になると、また、妖精たちの会話が始まりだした。
「あのね、ここの家主ったらここ一年ほど前から、ド派手な赤やピンクばかり着るようになったの。どうしてか知っている?」 最初の妖精が言う。すかさず二番目 「ねぇ、どうしてなの」
聞かれた最初の妖精が、「二年くらい前のことね。麗しのカリスマ歌手っていわれた美輪明広が講演に来たときに聞いたそうよ」 と、家主がたまたま見たショウで聞いた話を開陳した。
『年を重ねると、どうしても肌がくすんで冴えなくなる。薄汚いボロ雑巾のような色を着るから、まるでドブ鼠ね!若いときならシックで通るけど。もっと明るい色でカバーしなけりゃダメよ』
と鈴をころがすような声で、高らかにのたまったって。その時の彼女?のいでたちは、輝くような金髪で、三宅一生がデザインしたという黄色いアコーデオン・プリーツのドレスでね。
話聞いていた、二人目の妖精が、さもあきれ気味に 「それにしても、わが家主、素直と言えば聞こえがいいけどうかばかに単純な人間だね」
「ま、いいじゃない。そのうち世の中は、きっと高齢者だらけになるんだからさ。汚い灰色じゃ気が滅入って堪らないよ。カラフルな色があふれれば、きっと平和になるかもね」
と、三人目がとりなし顔で言う。総砂漠化で緑が失われた地球上に、明るい色彩が増せば少しは救われそうな気もしてきた。 <つづく>