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☆童話 『薔薇とカナヘビ』

薔薇とカナヘビ (5) 作 元川 芹香

「やっぱり、夏の薔薇は短いな」 花に鋏を入れようとした祖父さんを、孫が阻止。「ジージ、まだお花あるでしょ。頭とっちゃったら可愛そう」 真ん丸い目で、必死に悲しさを訴える。

「なっちゃん、見てごらん。こんな所に小さな蕾が、出てきているだろ!今度は、こっちの花に元気をあげないと、綺麗な花が咲かないんだよ。薔薇の幸せは、綺麗な花を咲かせることだよ」

「だから、こっち花は、お疲れ様だ」 花を摘むと、容赦なく切断。「ふーん。じゃあ、夏子も、元気なくなると、また元気が出て来るように、頭チョッキンされちゃうの?」

「ハッハッハ、なっちゃんは、おかしな事を考えるね。人間には、お医者さんがいるだろ?ブスッて、注射してもらえば、元気になるさ」 祖父さんの答えに、孫はおののく。

「やだー!夏子、注射大嫌い。だから元気なくならない」 孫は、あわてて祖父さんから離れると、しばらく草むらを捜索。「いたジョセフィーヌ!やったぁ捕まえた。あれ、えーん、しっぽがもげた!」

孫は泣きながら、カナヘビのしっぽをつまみ上げた。「大丈夫!またそのうち、新しいしっぽが、生えてくるさ。きっと、薔薇の花にお別れのお供え物で、しっぽを置いていったんだろうね」

今日も、祖父さんと孫は、夏の庭に水を撒く。 <お終い>
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この回で元川作品を暫く休みして、次週から芹香ママのエッセイを連載します。彼女が、三条市嵐南公民館の教養講座 「エッセイ教室」 を受講したときの習作です。



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