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☆童話 「薔薇とカナヘビ」

薔薇とカナヘビ (2) 作  元川 芹香

「あぶない、あぶない、祖父さんにつかまるなんて。駿足が自慢のこの脚も、少々にぶってきかたかな。それにしても、ここの孫は、変な子だ」

僕のこと可愛いだと…。ジョセフィーヌだって、そりゃ雌の名前じゃないか!ブツブツいいながらカナヘビは、ヤブランの草影で一息。

祖父さんと孫は昼ご飯を食べに家の中へとはいっていった。「やっと!退散したな。さて、薔薇さんの所でも行こう」

ひゅるひゅると、いやチョロチョロと薔薇の鉢に飛び移り、茎をつたって、蕾まで到達。「こんにちは!薔薇さん、ご機嫌いかがですか?」 カナヘビは、薔薇にご挨拶。

「あらカナヘビさん、今日は、随分遅いのね。もう体が痒くて、早くやってちょうだい!」 薔薇は、蕾を少し下に傾ける。「了解です!」

カナヘビは、茎をつたい、葉っぱにへばり付いた油虫をパクパク昼食タイム。「そこが一番かゆかったの。ありがとう!助かったわ」 薔薇は葉っぱを合わせ、カナヘビに感謝。

「いえいえ!こちらこそ、いつもご馳走様です。それより薔薇さん、どうして今年は顔を見せてくれるのが、遅いんですか?」 膨れたお腹を、引きずるように蕾の元へと昇る。

「どうしてかしら?私も、この庭で、もう長いこと咲かせているけど、夏に花を咲かせるなんて今年が初めてよ。でも、チョッとわくわくするの。夏の庭ってどんななのかなって?」

薔薇は、蕾を太陽に向け真伸。「夏の庭か!日差しが辛いだけ、僕にとっちゃなんにもかわりはしないけど。でも今年はなんだか楽しくなりそうです」 <つづく>


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