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☆縺れた綾糸

縺れた綾糸 (17) 作 元川 芹香

由紀子は良太に自分の出生やこと、特に誠治については少しずつ話していった。「由紀子がそんなお嬢様だとはな!でも、辛かったね。もう心配ないよ、ずっと俺が側にいるから!」

良太は優しく由紀子を抱いた。「良太!ありがとう」 良太の言葉で溢れる出る涙が頬をつたった。だが、「うつ」 のことだけはどうしても言えなかった。幸せが逃げていくようで怖かった。

年の瀬、増田家からは何年かぶりに賑やかな話声が聞えてきた。「良太君の着ているスーツはいいセンスだと思っていたら、そうかアパレルの仕事をしてるのか!で店は?」

由紀子が言う 「3店舗もお店任されて、良太が海外で仕入れる服は即完売になっちゃうんだから!」 良太の株をあげようとアピールを惜しまない。早く誠治に認めて欲しかった。

「そうか海外に買い付けに行くのか!最近なかなか良い店がなかったからな」 もはや、誠治には良太が金のなる木にしか見えなくなっている。

由紀子もそんな誠治を利用しようと考える。「結婚式は身内だけでしたいの」 由紀子の一言に 「そうは行かない!お前は大事な増田の一人娘だ。会社関係でも150人は招待しないとな!」

依然として、誠治の独裁はかわらない。節子がその会話に 「あなた!由紀子はお嫁にいくんだから、良太さんとご両親にお任せしましょう」 と釘を刺した。

由紀子は良太にどうしても店を持たせたかった。その為には出資元になる誠治の機嫌をそこねないよう、ある程度の希望を譲歩した。結果、式の段取りは全て誠治が仕切るハメになった。

誠治から呼ばれ、二人で披露宴の招待客リストを見ていた。これでもだいぶ我慢したのだろうが増田家70人に対し、長谷川家は30名が連ねてあった。

由紀子は増田側のなかに誠一郎の名を見つけてしまう。みるみるうちに由紀子の形相が変り震えながら「私、結婚式には出ない!」と言い、良太をもおいて増田の家を飛び出した。 <つづく>



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