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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第五章 謎の裏側 (5) 作 元川 芹香

何気なく、奥の方に設置された防犯カメラへ目を移した時、いつものカメラ向きと違うのに気がついた。

今時のバイト学生達は要領がいい、カメラの向きを変えて、仕事終りはちょっとした宴会を楽しむふしがある。その度に中里がブツブツ言いながら、角度を直しているのを山崎は良く見かける。

普段はパンドリーから控え室方向にカメラが据えている、今は何故かキッチンのカウンターに向けられていた。『絶対、動かされている』そう確信して、佐々木がでてくるのを待たず店を後にした。

「山崎さん!」帰る山崎の後ろを追いかけるように、佐々木が店から跳び出てきた。「佐々木さん!大変でしたね。ずっと心配していたんです。でも、本当良かった。私、信じていましたから」

痩せた様子の佐々木を見て、山崎は涙目をこらえている。「ご心配かけました。山崎さんも大変だったでしょう?」佐々木は自分のことよりも、山崎を気遣ってくれた。

「私、なんともないわよ。そんなことよりこれからどうなさるの?また、一緒に仕事したいんですけど…」 クビを覚悟して出社した佐々木だったが、会社にも温情というのがあったようだ。

「系列の回転すし店へ配転が決まりました」と、佐々木はうつむきながら話した。「それは良かった。ここでは、佐々木さんも辛いこと多いでしょうから。新しい所でも、頑張って下さいね」

山崎の目からたまった涙がこぼれ落ちた。「ありがとうございます。また、遊びに来ますから」 佐々木は、右手を出し握手を求めてきた。

その折れそうな手首をそっと両手で包み、山崎は握りかえした。「最後に一つだけ聞いておきたいんだけど。いいえ、佐々木さんが言いたくなければ黙っていていい。あの日、お店に戻った?」

あまりにもストレートすぎはしないかと気にしながら思い切って尋ねた。 <つづく>

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