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☆猫屋敷

猫屋敷(2) 作 元川 芹香

もともとママは、「私、猫は嫌い。そう、八代○紀って、どうも好きになれないないわ!」 と、彼女がテレビで歌うたび、口癖のように言っていた。

ケバケバしい化粧がイヤなのか、はたまた、イメージが猫に似ているからイヤなのか、まったく理解に苦しむ。要は 「猫が嫌い」 なのだ。

ところが大好きだったお兄ちゃんが進学のため東京に行くことになった。その寂しさからか、とうとうトチ狂ってしまったのである。

ある日、どこぞの家の塀垣に張り紙 『子猫、差し上げます』 が、気紛れママの目が止った。あれだけ気嫌いしていたはずだったのに、子猫の入った段ボール箱を抱えて帰ってきた。

どんなに可愛かったか知れないが、人間の 「嫌い」 ほどアテにならないものはない。

かつて 「コロ」 という名の雑種犬がいた。リカにアレルギー性の小児喘息があるとわかると、何事にも猪突盲信なママは 「大変!動物の毛は喘息の大敵」 と…。

残酷にも4-5年くらい飼った愛犬 「コロ」 を、有無を言わさず保健所に連れて行った。そんなことがあったにもかかわらず、アレルギーの原因が一番強いといわれていた猫を飼おうというのだ。

もしも、ママが突然なぞの死を遂げたとしたら、間違いなく 「コロ」 の怨念のしからしむところだろう。

話をもどそう。 「きん子」 とはまたヘンテコリンな名前である。「招き猫がわりにお金でも招いてちょうだい!」 と、願いを込めて 『苗字は信用、名前は金庫(子)』 とふざけて命名した。

名付け親のリカは、子供ながらも家の財政危機を察したのだろう。実によくできた娘である。 <つづく>


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