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☆縺れた綾糸

縺れた綾糸 (19) 作 元川 芹香

「うつ」 をひた隠しにしていた由紀子は、隠れて近くの病院で抗うつ剤と睡眠薬を処方してもらっていた。抗うつ剤の服用とアルコールが重なると、異常な程の効き目で家事がこなせた。

服用した後は興奮して寝むれなくなる。また、睡眠薬を飲む。悪いと分かっていてもそうせずにはいられなかった。

そんな生活を繰り返した結果、アルコール依存症を併発する。由紀子には、もう正常な精神を保つことが難しくなってしまった。

良太は結婚1年後で由紀子の病気を知った。哀れな由紀子を気丈に介護し続けた良太。回復を願って、十数件を超える精神科のドァを叩いた。

由紀子はそんな良太に甘え、ドクターショッピングを続けた。ある時は家を抜け出し、意識がなくなるまで外で酒を飲み、救急車で運ばれ病院から連絡があった。

また、ある時は良太が薬を鍵付きの鞄に隠すと 「この豚ヤロー!」 と気狂いしながらその鞄をハサミで切り裂いて暴れた。

想像を絶する修羅場の数々に良太はとうとう力が尽き、節子に 『自分も壊れてしまう』 と白旗を挙げる。『お互いの為の前向きな離婚』 との理由で、増田へ一刻も早く返品したかった。

由紀子は今、白鳥が飛来する湖畔にたたずむ精神病院でひっそりと治療を受けている。何の為自分はこの世に生まれたのだろうか、狭い病室で一人悩み続け生きている。 <つづく>



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