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☆縺れた綾糸

縺れた綾糸 (15) 作 元川 芹香
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現実から逃避ようとサービス業の勉強を口実に、ソムリエ養成学校の進学を望んだ。由紀子は失墜した心のまま、東京行きの新幹線の中で、ぼんやりと暮れなずむ景色を見つめていた。

いったい、どこから歯車がくるったのだろうか?再出発を夢みながら、ワインの勉強をつづける。増田から毎月から送金される生活費の手前、時々増田にもどりレストランの仕事を手伝った。

そんな中、誠一郎が大学を卒業して誠治のもとで働いていることが分かる。更に追い討ちをかける様に由紀子の 「うつ」 は進行していった。

『増田の跡取りとして育てられ、家をつぐためにあの父に耐えてきたのだったのか』 と、生きる目標さえを失って、行く先も決めずに夜の仕事に出てしまう。

客相手にやりきれなさを酒で紛らわす日々が続く…。アルコールと抗鬱剤と酒の乱用で錯乱状態に陥り、幾度か店で倒れることもあった。

静まり返った夜中、村山の家の電話のベルがけたたましく鳴り響く。静江は胸騒ぎを感じながら受話器をとった。由紀子からだ。その声は呂律が回らず聞き取りにくかった。

「伯母さん、私、もう一人ぼっちなの。死にたい!」 尋常ではない由紀子に「ゆきちゃんどうしたの?薬飲んだの?どれ位?」 静江は由紀子を落ち着かせようと静かに聞いた。

「ン、わからない!もう、何もかも、やんなっちゃった。お母さんにも見捨てられちゃうし…」 突然、激しく泣き出した。「ゆきちゃん、奈津実が行くまで待っていてね!」

その後、ツーツーと電話が途切れた。気が動転しそうになりながら、東京に住む奈津実を由紀子のマンションにタクシーを駆らせる。ロビーのインターホンで呼び出しても応答がないという。

ドアがオートロックだったことに気が付いた奈津実は、悪い想像をしそうになるのをこらえながら、管理人から鍵を借り、ほうほうの態で由紀子の部屋へ飛び込んだ。 <つづく>

お詫び:11/4投稿「縺れた綾糸」 (14) の最後3段落は削除、今回編集しであります。元川



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