☆ゆきむら殺人事件
ゆきむら殺人事件 第四章 探偵山崎事件を探る (3) 作 元川 芹香
坂口の生立ちに興味が沸き始めた山崎は、またもや好奇心に火が付いたのだ。坂口も戸惑うことなく、疑問に答えるべくして語りはじめた。
「地方公務員の一次試験にも無事合格し、次ぎ第二次の最終面接という段階で、父の弟にあたる叔父が5年前に公金横領で告訴されたことが発覚して、夢破れたって訳です」
知り合って間もない山崎に、そこまで話せたのか、自分ながら不思議に思えた。「厳しいのね。でも、制約がかかるのは2親等までじゃないの。伯父さんっていっても離れていたんでしょ?」
山崎は深入りした会話に少し後悔した。「僕は一度も会ったこともないし、伯父がいるとさえ知らなかったんです。父の弟といっても戸籍上のことだけ、祖父の後妻の連れっ子だったんです」
縁故はなかったが、人を守る仕事につきたく警備会社に入ったのだという。「今のところは、もっぱら防犯の巡回ばかりです」
「あら!それだってりっぱなお仕事じゃないの。ところでね、事件のこと聞きたいんだけど。あの時、店長の手に何か握られていたのに気がついていた?」
不運な坂口を気の毒に思いながら慰めて、山崎は肝心な本題に入った。「はい。右手だけしっかりと握られたままでした。あれは、いったい何でしたか?」
坂口は身を乗り出すように山崎に訊ねた。「『佐々木』というシールが貼られたオープンカッターだったのよ!」
「ゆきむら」の企業としての仕組み、職制や人間関係、仕事の流れなど出来るだけ細かく坂口に話した。 <つづく>
坂口の生立ちに興味が沸き始めた山崎は、またもや好奇心に火が付いたのだ。坂口も戸惑うことなく、疑問に答えるべくして語りはじめた。
「地方公務員の一次試験にも無事合格し、次ぎ第二次の最終面接という段階で、父の弟にあたる叔父が5年前に公金横領で告訴されたことが発覚して、夢破れたって訳です」
知り合って間もない山崎に、そこまで話せたのか、自分ながら不思議に思えた。「厳しいのね。でも、制約がかかるのは2親等までじゃないの。伯父さんっていっても離れていたんでしょ?」
山崎は深入りした会話に少し後悔した。「僕は一度も会ったこともないし、伯父がいるとさえ知らなかったんです。父の弟といっても戸籍上のことだけ、祖父の後妻の連れっ子だったんです」
縁故はなかったが、人を守る仕事につきたく警備会社に入ったのだという。「今のところは、もっぱら防犯の巡回ばかりです」
「あら!それだってりっぱなお仕事じゃないの。ところでね、事件のこと聞きたいんだけど。あの時、店長の手に何か握られていたのに気がついていた?」
不運な坂口を気の毒に思いながら慰めて、山崎は肝心な本題に入った。「はい。右手だけしっかりと握られたままでした。あれは、いったい何でしたか?」
坂口は身を乗り出すように山崎に訊ねた。「『佐々木』というシールが貼られたオープンカッターだったのよ!」
「ゆきむら」の企業としての仕組み、職制や人間関係、仕事の流れなど出来るだけ細かく坂口に話した。 <つづく>
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