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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第三章 坂口との出会い(6) 作 元川 芹香

トップ開けの者が持つ鍵をオープンキー、ラスト締めの者はクローズキー、そして店長が所有する店長キーと持ち場でその呼び方をかえ、持ち回りで管理されている。

「田中さん、そしたら私も犯人だっていうことになるわ。その日オープンキー持っていたし、なんたってミステリーの大鉄則、第一発見者ですからね」着替え室から山崎の厳しい声がした。

「そうよ!一之瀬のみんな、一度は店長を殺したいと思ったことがあると思うわ」 富田が山崎と佐々木をかばっていると、堺が小さな声でささやいた「しっ!地区長が来るわ」

竹村は、控え室のただならぬ雰囲気が見て取れた。「みなさんご苦労様です。いつもと同じようにくれぐれもお願いしますね」

『こんなことがあって、いつもと同じになんていく訳ないでしょ!』 心の奥で叫んだ富田は、穏便に乗り切ろうとする竹村の態度をとがめた。

「それから山崎君ちょっと店長室まで来てくれるかな」 といい店長室に戻った。山崎が店長室に入ると、おもむろにドアが閉められた。

ここで中里が死んでいたかと思うと気分が悪くなり、胃液が 『グッ』 と込み上げそうになるのをひたすら堪えている。「大丈夫?ちょっといいかな?」

タオルで口許を押さえている山崎を、竹村は隣あった椅子に座らせて 「山崎君には今回のことで随分迷惑をかけてしまって、済まない。これからはもう警察に出向かなくても済むと思う」

聞くなり山崎は覆ったタオルをはずした。「えっ、それって解決したんですか?」 「君も警察から口止めはされているとは思うが、今度のことはどうやら事件性が強いらしい」

「残念だが会社としては、容疑のかかった彼をこのまま在籍させておくわけには行かない。昨日の会議にでも処分する意向が固まりつつある」 と地区長の竹村は続けた。

どうやら、今週中にも解雇通達が下されるものと思われる。 <つづく>

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