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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第三章 坂口との出会い(4) 作 元川 芹香

雑踏の店内を、鳩が豆鉄砲を食らったような面持ちで富田が入店してきた。ドアにもたれている青い顔の山崎を目にすると叫んだ。「な、何があったの?」

山崎は無言で店長室を指差した。その直後、初動捜査に当たっていた警察官が 『邪魔だ』 と言わんばかりに、二人を控え室へと追いやった。

このエリアを総括していた地区長の竹村を初めとして、『ゆきむら』の幹部も続々と勢揃いした。フロアーの隅で話し合いがもたれ 『本日、臨時休業』 が入口にはられた。

富田と後に来た田中は早々に帰宅させられたが、第一発見者の山崎と警備の坂口は、パトカーに乗せられ所轄の署で2時間近く事情聴取をうけた。

事件のあと3日間は現場検証や従業員達への聞き取り調査などで休業となったが、その後は本社から臨時に社員が派遣され営業が再開されることになった。

営業再開初日の朝、8時45分。一之瀬店のランチ部の従業員が召集され、フロアー中央で竹村から改めてことの説明がなされた。

「えー、みなさんも既にご存じだとは思いますが、残念なことに中里店長は先週の土曜の朝方に事故でお亡くなりになりました。故人の冥福を祈り1分間の黙祷を捧げます」

「黙祷!」静まり返った店内に電話の音が、けたたましく鳴る。臨時の社員が慌てて電話の応対に走る。小声で何か話し続けている。

「黙祷終り。さて、警察の聞き取り等でみなさんにはご迷惑をかけていますが、本日から心機一転。また、営業を再開したいと思います」 <つづく>

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