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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第三章 坂口との出会い(3) 作 元川 芹香

狭い部屋は、汗臭さと異様な匂いで充満している。「店長!」中里を揺すり起こそうと肩に手をかけた瞬間、巨体が椅子から崩れ落ちるように足元にのし掛かった。

「うぁあー」予期しなかった事態に山崎は、扉付近に待機していた坂口に思わずしがみ付き、床に座り込んだ。坂口は腰を抜かした山崎を抱きかかえ、ひとまず店長室の外の通路に座らせる。

間をおかず、坂口が一人店長室に入り状況を確認。素早く自分の携帯で先ず救急車を呼んだあと、ポケットの無線から警備会社に連絡を取った。

「こちら坂口。確認の為「ゆきむら」一之瀬店を巡回中。店内に入ったところ、店長室で中里様が口に何かをつまらせ倒れているのを発見しました。救急には連絡済み。これから110番します」

坂口の淀みなく訓練された機敏な行動を、ただボーと見ながら、彼女は体の中に存在し得る最大限の力を振り絞って、壁につかまりながらどうにか立ち上がった。

「大丈夫ですか?」坂口はいたわるように声をかけた。「店長、死んでるの?」 山崎は、恐る恐るドアの中をうかがいながら聞いた。

「多分、脈が無かったですからね。見ない方がよろしいですよ」山崎を制止したが、坂口が警察に通報している間に、持ち前の好奇心がうずき始め再び、店長室に入った。

鼻をつまみながら、転がった中里の体に出来るだけ触れないように顔を見た。口の中は、はみ出すくらい膨らんでいた。それが何んであるかは分からない。顔を更に近付けた。

「何、アンパン?」救急車やパトカーのサイレンとともに数人の救急隊員と警察官、それに応援の警備員が一之瀬店へ集結した。 <つづく>

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