☆ゆきむら殺人事件
ゆきむら殺人事件 第二章 喧騒の中のキッチン(5) 作 元川 芹香
そう言っている富田をなだめるように、堺はまた話を続けた。「待ってよ、富田さん。話にはまだ、その先があるの…。びっくりした佐々木さんは、慌ててあとを追いかけて店長室に行ったそうよ。
いつもは空いているドアが締まっていて、ノックしながらドア越しに 『すいませんでした。ですが、どうしても今日の残り作業を白石君だけにまかせるわけには…』 と、
言った途端に内鍵がガチャって締められたんだって」 「うわぁー、最低だ。もう死んじゃえばいいのにね」 富田はひとことで言い捨てた。
「今回のことは、店長が 『佐々木さんとみんながね仲良しなんだ』 と思い込んでいる、ひがみ根性が原因でしょ。私たちのこと本当に理解してくれているのって、店長じゃないんだもの」
佐々木は、何かと気を遣ってくれる山崎からメールで、たびたび励まされていた。「堺さん!それでウラテンはどうしたの?」 富田はやや落ち着きを戻し、バックから油取り紙を取り出し顔にあてた。
「出勤して間もなく、私、なんだか店の様子おかしいなあって感じたので、白石君にことの真相を聞いたの。冷静沈着な佐々木さんも、この時ばかりは目尻が引きつって見えたそうよ
そのままキッチンに戻って作業している間に、店長、佐々木さんには声かけずに帰っちゃった。あの仕打ちには、さすが 『今までどのくらい店長の尻拭いをしてきたか』 って落胆してたかと思うわ」
「店長ったらさァ、自分の部屋で向かいのコンビニから買ってきたアンパンをパクつきながら、携帯している姿しか私、見たことないんですけど」
山崎はいつも持ち歩いている飴玉を二人に渡しながら、自分も一粒口に入れた。 <つづく>
そう言っている富田をなだめるように、堺はまた話を続けた。「待ってよ、富田さん。話にはまだ、その先があるの…。びっくりした佐々木さんは、慌ててあとを追いかけて店長室に行ったそうよ。
いつもは空いているドアが締まっていて、ノックしながらドア越しに 『すいませんでした。ですが、どうしても今日の残り作業を白石君だけにまかせるわけには…』 と、
言った途端に内鍵がガチャって締められたんだって」 「うわぁー、最低だ。もう死んじゃえばいいのにね」 富田はひとことで言い捨てた。
「今回のことは、店長が 『佐々木さんとみんながね仲良しなんだ』 と思い込んでいる、ひがみ根性が原因でしょ。私たちのこと本当に理解してくれているのって、店長じゃないんだもの」
佐々木は、何かと気を遣ってくれる山崎からメールで、たびたび励まされていた。「堺さん!それでウラテンはどうしたの?」 富田はやや落ち着きを戻し、バックから油取り紙を取り出し顔にあてた。
「出勤して間もなく、私、なんだか店の様子おかしいなあって感じたので、白石君にことの真相を聞いたの。冷静沈着な佐々木さんも、この時ばかりは目尻が引きつって見えたそうよ
そのままキッチンに戻って作業している間に、店長、佐々木さんには声かけずに帰っちゃった。あの仕打ちには、さすが 『今までどのくらい店長の尻拭いをしてきたか』 って落胆してたかと思うわ」
「店長ったらさァ、自分の部屋で向かいのコンビニから買ってきたアンパンをパクつきながら、携帯している姿しか私、見たことないんですけど」
山崎はいつも持ち歩いている飴玉を二人に渡しながら、自分も一粒口に入れた。 <つづく>
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