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☆童話 「薔薇とカナヘビ」

薔薇とカナヘビ (3) 作  元川 芹香

祖父さん、夕方の庭に水を撒く。「じぃーじどうしてまた、その薔薇みてるの?」 孫が、祖父さんの手を引っ張る。

「薔薇はな、春か秋に花が咲く。だけどこの薔薇だけは、なぜか真夏なんだ。それに去年は、たくさんつくた蕾が、今年は小さくたったひとつ。枝も細くて弱々しい」

そのひとつを、なんとか綺麗に咲かせたいと。そんな祖父さんを無視して、カナヘビを捜索。「ジョセフィーヌ、なっちゃんよ。出てきなさい!あっカエルだ。まって~」

変わり身の早い孫は、呆気なくカエルに転向。「なっちゃんは薔薇より、爬虫類マニアだね」 祖父さんは、ほほ笑み薔薇に水をかける。

コケコッコー、近くの学校にいる鶏が、目覚まし時計。「おはようございます!薔薇さん。ついに咲きましたね」 カナヘビが、薔薇を見上げる。

とっても小さく薄紅色の薔薇の花。「ええ!やっと咲きました。今、夏の香りを楽しんでいます」 薔薇は、少しだけ風にそよぐ。

「夏の香りって、どんなにおいですか?」 カナヘビは花の傍らで尋問。「なんだか、とっても薬臭い。まるで祖父さんが撒く防虫剤みたい」

「薔薇さん、それは、すぐそこのプールの消毒剤のにおいです」 カナヘビは花の付近にいた油虫をパクリ。
<つづく>



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