☆母の世界
母の世界 (4) 作 元川 芹香
〈遺言〉
「私の遺言は、ノートに書いてあるから、ちゃんと覚えててね。門標はゴメン。死んだらあのきれいな毛布と、顔にはスワトウのレースのハンカチかけて」
死に顔は絶対に見せて欲しくない様子だ。「それからお返しは…」 どうやら死んでまで、自分で仕切りたいらしい。
そう言ったってさ 「彼女と最後のお別れしたいわ」 と泣きながら申し出られた人に「故人のかねてからの意思を尊重して、ご遠慮ねがいま~す!」 とは断わり辛い。
それに人間ってのは勘ぐり深い、断られれば 「あの人ったら、いったいどんな顔して死んだのかしら」 と、余計に見たくなるものだ。
いっそのこと、ミル・マスカラスのような覆面でお披露目するか、はたまた最後まで美を追求した証しとして、鮮やかなに大家政子風のっぺりメイクってのはいかが?
どちらにしても明るい葬式であの世に旅立っていただきたいが、『仏壇はいらないから、骨をネックレスにして首からさげちょうだい』 ってのだけはご勘弁願いたい。 <次へ>
〈遺言〉
「私の遺言は、ノートに書いてあるから、ちゃんと覚えててね。門標はゴメン。死んだらあのきれいな毛布と、顔にはスワトウのレースのハンカチかけて」
死に顔は絶対に見せて欲しくない様子だ。「それからお返しは…」 どうやら死んでまで、自分で仕切りたいらしい。
そう言ったってさ 「彼女と最後のお別れしたいわ」 と泣きながら申し出られた人に「故人のかねてからの意思を尊重して、ご遠慮ねがいま~す!」 とは断わり辛い。
それに人間ってのは勘ぐり深い、断られれば 「あの人ったら、いったいどんな顔して死んだのかしら」 と、余計に見たくなるものだ。
いっそのこと、ミル・マスカラスのような覆面でお披露目するか、はたまた最後まで美を追求した証しとして、鮮やかなに大家政子風のっぺりメイクってのはいかが?
どちらにしても明るい葬式であの世に旅立っていただきたいが、『仏壇はいらないから、骨をネックレスにして首からさげちょうだい』 ってのだけはご勘弁願いたい。 <次へ>
コメント 0