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☆猫屋敷

猫屋敷(8) 作 元川 芹香

ママを呼び懐中電灯で、部屋の押し入れの探索にかかった。襖6枚の押し入れの中には、今では見当たらないが布団いれるに使っている長持(大きな細長い木箱)が入っている。

その長持と壁のわずかな隙間に、かすかに動く小さな物体がいる。生まれたばかりの三匹の子猫たった。子猫は目も見えず震えていた。

「いやだわ!姫ったらこんなとこに産み落として気付かなかったら、もう、死んでるわよ!可哀想に」 とママが、救出した子猫の赤ちゃんたちを空き箱にタオルをしき包んであげた。

どうしたことだろう「姫」はいっこうに現れる様子はない。いつかテレビでやっていたことを思い出しリカは、子猫達にスポイトで牛乳飲ませて姫を待った。

数日して 「姫」 は何食わぬ顔でやって来た。だが、子猫達の側には全く寄り付こうとしない。リカは、自分の体を舐めくつろぐ姫に子猫を近付けてみた。

なんと 「いにゃーあ」 と甲高くわめき、子猫に噛み付こうとした。いまどき人間の世界で問題の育児放棄である。ネコ社会では驚くほどの現象ではない。

三匹の子猫は雄猫一匹に雌2匹。ママのブランド好きから雄を 「グッチ」、雌その1を 「シャネル」 その2には尻尾がL字型に曲がってることから「エルボ」と命名した。

段々と猫らしくなると 「グッチ」 は 「ゴン太」 驚く程にそっくりになった。ママいわく 『父親はゴン太に間違いないわ。姫はお腹に子供が出来てから、この家にきたのね。

だから体に触ると怒ったのよ。猫のくせにこの家なら、子供達の面倒を見てくれるって分かってたのかもよ。私があれだけ叱りつけても出ていかなかったんだから、たいした猫だこと!』

「ゴン太」 は人間の世界で俗に言う一夜の過ちを犯しておきながら昔の 「きん子」 をわすれられないのだ。子供ができた今でも 「姫」で妥協はできないのかもしれない。

褒めているのか、けなしているのか良くわからない。のちに父親が誰かという論議の及ぶこととなる。そんな一途なヤツを住処にしている私にも思わぬ展開が……。 <つづく>



タグ:猫屋敷
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