☆縺れた綾糸
縺れた綾糸 (6) 作 元川 芹香
それでも誠治が帰ってくる日には、不思議な程いつもの冷静な節子に戻る。ところが、ある夜の事だった。誠治は、枕元に包丁握って立つ見下ろす節子の顔に凄まじい恐怖感をおぼえた
危機的状況の重大さから節子に精神科の診察を受けさせた。しばらく別宅通いを控えた為、節子の精神は落ち着きを取り戻した。
張りぼてに似た家庭ではあったが、さざ波をたてながらも、どうにか暫くは時が過ぎて行った。
髪を染め、薄化粧で高校生とは思えないくらい、大人っぽく美しくなっていた由紀子が、ピンクのヘルメットをかぶりナナハンのうしろから前にしがみついていた。
「ゆき、どこに行く?」 と茶髪で片耳にクロス型のピアスの剛が由紀子に聞く。「海が見たいわ!学校はつまんないし、家なんかもっとも最悪」 「了解!じゃあいっちょ、すっ飛ばして行くか!」
頬にあたる冷たい風がなんとも心地良く、このままずっと走っていたい気持ちにさせた。由紀子が剛と出会ったのは学校近くの茶店。授業をさぼっていた由紀子に、剛が声をかけてきた。
剛は私大生で、ウェイターのバイトをしていた。背が高く、いわゆる二の線をいっている。由紀子も同年代の男の子では物足りなかった、話題抱負の剛に初めての恋をした。
誠治は10時になっても帰らない由紀子に苛立っていた。しばらくすると家の前からバイクのエンジン音が聞こえ、途絶えると窓越しに抱き合う二人の姿を窓越しに目にした。
誠治はすぐ外に走り出て剛に向って怒鳴った。「お前!なにやってるんだ。うちの由紀子に今後手を触れたら、承知しないからな。ふざけやがって!」まるでやくざのハッタリだ。 <つづく>
それでも誠治が帰ってくる日には、不思議な程いつもの冷静な節子に戻る。ところが、ある夜の事だった。誠治は、枕元に包丁握って立つ見下ろす節子の顔に凄まじい恐怖感をおぼえた
危機的状況の重大さから節子に精神科の診察を受けさせた。しばらく別宅通いを控えた為、節子の精神は落ち着きを取り戻した。
張りぼてに似た家庭ではあったが、さざ波をたてながらも、どうにか暫くは時が過ぎて行った。
髪を染め、薄化粧で高校生とは思えないくらい、大人っぽく美しくなっていた由紀子が、ピンクのヘルメットをかぶりナナハンのうしろから前にしがみついていた。
「ゆき、どこに行く?」 と茶髪で片耳にクロス型のピアスの剛が由紀子に聞く。「海が見たいわ!学校はつまんないし、家なんかもっとも最悪」 「了解!じゃあいっちょ、すっ飛ばして行くか!」
頬にあたる冷たい風がなんとも心地良く、このままずっと走っていたい気持ちにさせた。由紀子が剛と出会ったのは学校近くの茶店。授業をさぼっていた由紀子に、剛が声をかけてきた。
剛は私大生で、ウェイターのバイトをしていた。背が高く、いわゆる二の線をいっている。由紀子も同年代の男の子では物足りなかった、話題抱負の剛に初めての恋をした。
誠治は10時になっても帰らない由紀子に苛立っていた。しばらくすると家の前からバイクのエンジン音が聞こえ、途絶えると窓越しに抱き合う二人の姿を窓越しに目にした。
誠治はすぐ外に走り出て剛に向って怒鳴った。「お前!なにやってるんだ。うちの由紀子に今後手を触れたら、承知しないからな。ふざけやがって!」まるでやくざのハッタリだ。 <つづく>
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