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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第四章 探偵山崎事件を探る (6) 作 元川 芹香

「そうですね。芯から熱くなります。恥ずかしながら僕 『太陽に吠えろ』 の大ファンだったんです。それで警察官に憧れました。動機はいたって単純ですけど」

「えっ、それって私達の世代のドラマでしょう。何で知ってるの?」 山崎は年が離れている坂口との間に、意外にも共通点が見つかって内心喜んでいた。

「父が好きだったんです。番組が終了しても、繰り返しビデオを見ていました。小さい頃から知らず知らず、影響を受けてしまったのでしょう。その父も3年前に他界しましたが……」

「そうだったの寂しかったわね。それでね気になることって言うのは、アンパンなの!」 「アンパン?」 坂口が裏返したような声で聞き返えした。

店長の無類のアンパン好きは、店の誰もが知っている。毎朝、店長室のごみ捨てをしている堺さんが言うには 「いつも捨てられているのは、こし餡のアンパンの袋ばかりなんです」って。

「その日、店長の口には杵屋のおぐらアンパンが3個押しこまれていたって、事件後に刑事が言ってたわ」 「それ、コンビニで僕も良く買います。こしアンパンは美味しいですからね」

坂口の的はずれな答えに、「坂口ちゃん、そういうことじゃなくて、犯人は店長がこし餡しか食べないってこと知らなかったのよ」 「その情報、誰と誰が知っているんですか?」

「その話をしていた時は確か、佐々木さんに私と、情報をくれた堺さんの3人しかいなかったわ」 「もし、佐々木さんが犯人なら、あえておぐらアンは選ぶ訳はないでしょうね」

窓の外から5時を告げる 「七つの子」 のチャイムが聞こえてきた。「あっいけない。もうこんな時間だ!」 山崎は携帯で時刻を確認した。

「なんか興奮してしまって、血が騒ぎ出しました。すいません!」 「あら、私もよ!そうだ。また何か情報を掴んだら連絡するわ。メルアド聞いてもいいかな?」

「OKです。僕も、隣のコンビニの店員に友達がいますから、アンパン情報でも聞いてみます」 二人は携帯の赤外線通信でメルアドと電話番号を交換してファミレスを後にした。
<第五章へつづく>
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本章は4月29日(火)投稿の予定でしたが、北信越高校野球新潟大会を観戦したため今日の投稿になりましたことを、お詫びします。

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