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☆ゆきむら殺人事件

ゆきむら殺人事件 第四章 探偵山崎事件を探る (2) 作 元川 芹香

「おタバコは?」 ウェイトレスに尋ねられた山崎は、背の高い坂口を見上げると、彼は掌をこちらに向けて振った。「禁煙席で」 と告げる。

出来るだけ目立たない席を見つけ、入口を背に自分から先に着席した。その仕草は、中年女性と若い青年がアバンチュールを楽しんでいる、TVドラマのシーンを思わせるようだ。

「何にする?」 「僕、今さっき昼食べたばかりなので、コーヒーを」 坂口はメニューには目もふれず言う。空腹である筈の山崎は、さすがに彼の前で一人食べる訳にもいかない。

コールボタンを押して、ドリンクバーを二つ頼んだ。「何、飲む?」 「僕も行きます」二人でドリンクバーが置かれたコーナーに行き、坂口はコーラ?を山崎はコーヒーを注いで席へ戻った。

「さっきコーヒーって格好つけましたが、僕、実は飲めないんです」 坂口は頭を掻きながら、ストローでコーラをすする。山崎もブラックのコーヒーを一口、口にしてから話はじめた。

「あの日の坂口さんの対応にはすごく感心しちゃった。やっぱり日頃の訓練からなのね」山崎は頬杖をつきながら片手でコーヒーにミルクを入れスプーンでかき混ぜた。

「いえ、本当のところドキドキものでした。マニュアルはあるのですが、ああいう現場に出くわすことは、まず、ありませんからね」 謙遜しながら一気にコーラを飲み干した。

「そんなことないわ。怖かったけど坂口さんがいらしたおかげで安心できたの。警備のお仕事をしてもう、どのくらい?」 「5年です」

山崎は、頭のどこかで 『大学新卒入社なら、27~8ってところだ』 と、おおざっぱ計算しながら坂口を見た。「でも警備員より警察官って感じかな。あっ失礼なこと言っちゃった。ごめんなさい」

「いいえ、本当は僕、警察官になりたくて大学に進学したんです。でも、あと一歩というところで断念しました」 「そう、きっと何か事情があったんだ」 <つづく>

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