SSブログ

☆ 「モズの穴」終回

もずの穴(33) 元川 芹香

強烈な消毒のにおいがボクを目覚めさせた。「惇ちゃん、起きたのね。もう熱が下がったから、帰っていいそうよ。あら、あなた何に握っての?」 フジ子さんがボクの掌を見ている。

「あっこれ、あの時の黒飴の包み紙だ」「お守りに入れた?」「そう、たった今夢の中でね、山猿から美味しかったって伝えて欲しいって言われたんだ」

「まぁ?。それで、惇ちゃんどうする?このままフジ子さんたちと一緒に暮す?」「ううん。父さんと鎌倉に帰る」「大丈夫?色々大変よ」 フジ子さんは口を尖らせた。

「もう平気だよ。もずの穴から出られたんだもん。今度はゆっくりと時間をかけて大人になるからさ」新幹線の窓に差し込む日差しが眩しい。

「淳一、ブラインドを少し下ろそうか?」「大丈夫。まだ外の景色を見ていたいから・・・」

そして、ポールが宝物入れの引き出しにしまったように、ボクも一片の蛇の脱け殻と黒飴の包み紙をあの本の中へと挟み込んだ。 <終り>
----------
毎週火曜日に連載しました「モズの穴」は、今日で完結しました。2013/10/~2014/7/の「ゆきむら殺人事件」、2012/12/~2013/7/「銀の手」に続き、元川作品の長編3作目です。

「長い間ありがとうございました。暫く筆をおいて、また皆さんのお目を汚したい」と、作者はコメントしています。ふたたび寄稿してくれること、ブログ管理者も楽しみです。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。