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☆ 「モズの穴」

もずの穴(32) 元川 芹香

― 白チンの夢 ―

「おい白チン、良かったな。父ちゃんが助けに来てくれて」「あっ、山猿!じゃない竜太君だ」「山猿でいいよ!」

「助けてくれてありがとう。そして、ごめんなさい。ボクは君に酷いことして見せたんだね。もずの穴に水入れるなんて、池で溺れた時とても苦しかっただろ?」

「苦しいもなにも、死ぬほどにな。いや、死んだんだっけ。なーんて、過ぎたことは忘れることにしている。この黒飴、久々に食ったらすごく美味かった。それに味噌おにぎりも」

婆ちゃんにオレが礼を言っていたと伝えてくれと山猿はいった。「うん。わかったよ。さっちゃんって、母さんに会ったの?」

「まだ、こっちには着てないよ。白チンのことが心配で、なかなか来られないんだろうな。だから、どんな悪ガキかオマエのこと偵察しに行ったのさ」

「そうだったのか。母さん死んでから、随分悪い子だったからね」

「自分で分かるうちはいい子だよ、白チン。オレはガキのままだけど、オマエは大人になれるんだ。オレの分まで楽しんでくれよな。オバサンになったさっちゃんと見てるからさ」

ああ、山猿が消えていく。さようなら~、山猿! <続く>

タグ:モズの穴
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