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☆ 「モズの穴」 ☆大相撲 -十両小柳、昨日と今日

もずの穴(26) 元川 芹香

黒飴を一つ口にいれた。そして何度も何度も写真を見た。しわくちゃに笑ったお爺さんとお婆さんが二人揃ってピースサイン。可笑しすぎて、ボクは土砂降りの雨の中泣きながら笑った。

「待たせたな。無事か!白チン」 「山猿。これ君の黒飴だ」 ボクはこれでもかとういう力投で黒飴を投げた。「おーサンキュ。元気そうだな」

山猿は黒飴を頬張り沢山の蔓を繋ぎ始めた。繋ぎ終わると、一つの端を一番近いブナの幹にしっかりと結び、もう一つの端に太い木の枝をくくり付けた。

「いいか、これからこの枝を投げる。絶対受け取れ。そしたら、それをグルグルにからだに巻き付けろ、抜けない用に何回もだ。しっかり固く結ぶんだぞ」 「うん。わかった」

山猿はものの一回で、ボクの目の前に枝を落としてみせた。山猿の言う通りにグルグル巻きガッチリ縛った。池の水はすでに胸のところまできている。池のほとりも遠くになった気がする。

僕はこのまま沈んでしまうのか…? 「できたよ!」 「そうか。これからオレは助けを呼びに行く。オマエは絶対助かる。助からなきゃ困る。もしものことがあったら、さっちゃんに申し訳がないからな」

「サッチャンって誰のこと?山猿、君はいったい何者なんだ?」 「さっちゃんはオマエの母ちゃん!オマエが勝手に山猿って呼んでたオレは、竜太って名前だ」

いつの間にか、ボクの目の前から山猿はいなくなっていた。雨足が弱くなると、黒い雲が次第に流れみるみる空が明るくなってきた。それでも、水のかさは増すばかり。もう首のところまできた。

山猿、フジ子さん、ジージ、父さん…、会いたいよ!。「惇ちゃん?」 フジ子さん? 「惇坊!」 ジージの声だ。「惇一!どこだ?」 あっ、あれは父さんだ!

すごい!蝉の大群がぼくの周りを飛んできた。「ここだよ!ごぼっ。父さ~ん、ぼくはここだよ!ごぼっごぼっごぼっ」 「あそこだ!惇一、今行くぞ!」

ボクは池の泥水をいっぱい飲みながら、ずるずると引き上げられた。父さんに抱かかえられたボクは、山猿のお陰で助かった。みんな、雨と涙と池の泥水でぐしゃぐしゃな顔だ。 <続く>

9日目小柳は負けて4勝5敗、今日は筆頭 豊響戦。

昨日行われた大相撲一月場所9日目、十両小柳 vs 英乃海は寄り倒しで英乃海。勝った英乃海は5勝4敗、小柳は4勝5敗で負けが先行しました。

今日10日目小柳の対戦相手は、幕内51場所の経験を持つ筆頭 豊響*(5勝4敗)です。小柳と同じく、突き・押しを得意としています。若差と勢いに期待!
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*豊響は、山口県下関市出身 境川部屋所属32才。初土俵が平成17年1場所、最高位は前頭2枚目。過去受賞歴は、序二段で1回十両優勝が2回と、敢闘賞3回に金星が一つあります。

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