☆ 「モズの穴」
もずの穴(24) 元川 芹香
山猿に尋ねる間もなく、ボクの頬にポツリ、それは大きな雨粒が一粒…と思っていたら、バシャバシャバシャと目も開けていられないほどの豪雨が降り出した。
「ほら、言ったこっちゃない。大丈夫か?」 「平気だよ。こういう雨、外国じゃスコールっていうんだよ」 すると、今度はゴロゴロ空が唸り始めた。
「スコップかなんか知らねぇけど、ぼやぼやしてたら雷に当たるぞ。どこかに逃げよう」 山猿は辺りを見回す。「あの木の下は!」 ボクは村人が龍と間違えたあの大木を指した。
「バカ!雷は一番背が高いところに落ちるんだ。あんなとこに逃げたら間違いなく丸焦げ、黒チンになるぞ。ええっい、もう遅い。とにかく伏せて身を低くしよう」
山猿はボクの背中を押すと、二人でうつ伏せになった。「あっ、青い龍だ!」 その時、青く猛々しい光を放って、天空からあの大木に一匹の青い龍が降りてきた。「龍だ!」 ボクは無我夢中で近づく。
「白チン、どこ行くんだ!それは龍なんかじゃない、イナズマだ!」 「えっ…」 気がついたら、ぼくは水の中にいた。そう、ほとりから二メートル以上離れた池の中。
「おい、早く上がってこい!」 「うん。でも足が重くて次の一歩が出ないんだ」「オマエもそうか…」雨の音がひどくて山猿の声が途切れ途切れに聞こえる。
「えっ何?よく聞こえない」 「余計なこと喋るな!いいか、出来るだけじっとしてろ。今俺が縄になる蔓を捜してくるから、何か楽しいことでも考えていろ」
さっきは腰のところだった水かさが、もうお腹まで来ている。雨もより強くなってきた。ぼくは死ぬのかな。これはきっと天罰だ。
「そうだ。フジ子さんのお守りがあった」 ボクはリュックからお守りを力いっぱい引きちぎった。あっ、鈴が流されていく。
赤いゴツゴツした袋の中には、黒飴が二つと何故だかジージとフジ子さんの写真が入っている。 〈続く〉
山猿に尋ねる間もなく、ボクの頬にポツリ、それは大きな雨粒が一粒…と思っていたら、バシャバシャバシャと目も開けていられないほどの豪雨が降り出した。
「ほら、言ったこっちゃない。大丈夫か?」 「平気だよ。こういう雨、外国じゃスコールっていうんだよ」 すると、今度はゴロゴロ空が唸り始めた。
「スコップかなんか知らねぇけど、ぼやぼやしてたら雷に当たるぞ。どこかに逃げよう」 山猿は辺りを見回す。「あの木の下は!」 ボクは村人が龍と間違えたあの大木を指した。
「バカ!雷は一番背が高いところに落ちるんだ。あんなとこに逃げたら間違いなく丸焦げ、黒チンになるぞ。ええっい、もう遅い。とにかく伏せて身を低くしよう」
山猿はボクの背中を押すと、二人でうつ伏せになった。「あっ、青い龍だ!」 その時、青く猛々しい光を放って、天空からあの大木に一匹の青い龍が降りてきた。「龍だ!」 ボクは無我夢中で近づく。
「白チン、どこ行くんだ!それは龍なんかじゃない、イナズマだ!」 「えっ…」 気がついたら、ぼくは水の中にいた。そう、ほとりから二メートル以上離れた池の中。
「おい、早く上がってこい!」 「うん。でも足が重くて次の一歩が出ないんだ」「オマエもそうか…」雨の音がひどくて山猿の声が途切れ途切れに聞こえる。
「えっ何?よく聞こえない」 「余計なこと喋るな!いいか、出来るだけじっとしてろ。今俺が縄になる蔓を捜してくるから、何か楽しいことでも考えていろ」
さっきは腰のところだった水かさが、もうお腹まで来ている。雨もより強くなってきた。ぼくは死ぬのかな。これはきっと天罰だ。
「そうだ。フジ子さんのお守りがあった」 ボクはリュックからお守りを力いっぱい引きちぎった。あっ、鈴が流されていく。
赤いゴツゴツした袋の中には、黒飴が二つと何故だかジージとフジ子さんの写真が入っている。 〈続く〉
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