SSブログ

☆「モズの穴」

もずの穴(10) 元川 芹香

新幹線で二時間半、フジ子さんとふたり駅を降りると、ジージが黄色い軽自動車で向かいに来てくれていた。そこから、車でまた一時間とかなり辺鄙な田舎町。近くの川辺に白鳥の飛来地がある。

昔、何とかとう武将の城があったとか、古代の旧石器が出てきとか、あと初めて漢和辞典を作った偉い学者の生まれた所だとか…。ハンドルを握りながら、ジージはずっとぼくに話かけた。

母さんのウンチクはどうやら遺伝らしい。「ジージったら、一人浮かれちゃって。惇ちゃん、そんなこと興味ないわよね?」 「う~ん、どうだろう?今はお腹がペコペコ」ぼくは返事に困り適当に逃げた。

それでもジージの話は尽きない。「そこの田んぼに白い鳥がいるだろ?あれはサギっていう鳥だ。田んぼに棲む生き物を食べるのだが、口に入れて巣へ持ち帰る途中、

まれに吐き出してしまうこともあるらしい。空からカエルやおたまじゃくしが降ってきたなんていう珍ニュースは、大方サギの仕業なんだそうだ」

白鳥よりも小さくほそりとした鳥。その姿をぼんやりと眺めていたら、なぜだかカウンセリングの先生の話を不意に思い出した。 <続く>


タグ:モズの穴
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。