☆「モズの穴」
もずの穴(8) 元川 芹香
今度は唇の右端が上がった。なぜ、なぜって、お前はナゼナゼ星人か! 「はい。人間が勝手に決めた、ウサギにははた迷惑な決まりですよね?」
「そんなことないわよ。ウサギのための決まりよ。食べ過ぎて病気にならないように、それに変なモノも食べないように。あのね、神野君が餌をやっていたところを見ていたお友達がいたの」
間もなく、ウサギが口から泡を吹き出して苦しんだ。それを見ていたボクはとっても怖い顔していたんだろう。神野君は泣きながら知らせにいったのだ。
「すぐにウサギ小屋にいって手当したんだけど、あのウサギ今朝死んだわよ」 「そうですか」 ついには、保健師さんの米神がピクピクと痙攣し大声で怒鳴る。
「そうですかって、いったい君はウサギになにを食べさせたの!」 「天上の花の根です」 ―ボクは夏休みの間、児童相談所というところへ通うことになった。―
そこでは箱庭という子供の砂遊びみたいな事をさせられたり、カウンセラーのオジサンと色々お喋りしたり、夏休み宿題はやらなくていいのかなぁ…という毎日だった。
*****
あの日からアイツは家から消え、変わりに母さんの母さんが田舎の新潟からやってきた。相談所から戻り、玄関のドアを開ける。
母さんがお正月に作ってくれたお雑煮の匂いがした。「惇ちゃん、お帰りなさい。いま、フジ子さんがおいしい大根汁を作ったから、今夜は餅を煮て食べようね」
フジ子さんはお祖母ちゃんだけれども、本人がお婆ちゃんを連想させる呼び名はいやだと言うからそう呼んでいる。
たぶん、母さんが生きていて歳をとったらこんな感じかなと思うくらい、よく似たフジ子さんが出迎えてくれた。 <続く>
今度は唇の右端が上がった。なぜ、なぜって、お前はナゼナゼ星人か! 「はい。人間が勝手に決めた、ウサギにははた迷惑な決まりですよね?」
「そんなことないわよ。ウサギのための決まりよ。食べ過ぎて病気にならないように、それに変なモノも食べないように。あのね、神野君が餌をやっていたところを見ていたお友達がいたの」
間もなく、ウサギが口から泡を吹き出して苦しんだ。それを見ていたボクはとっても怖い顔していたんだろう。神野君は泣きながら知らせにいったのだ。
「すぐにウサギ小屋にいって手当したんだけど、あのウサギ今朝死んだわよ」 「そうですか」 ついには、保健師さんの米神がピクピクと痙攣し大声で怒鳴る。
「そうですかって、いったい君はウサギになにを食べさせたの!」 「天上の花の根です」 ―ボクは夏休みの間、児童相談所というところへ通うことになった。―
そこでは箱庭という子供の砂遊びみたいな事をさせられたり、カウンセラーのオジサンと色々お喋りしたり、夏休み宿題はやらなくていいのかなぁ…という毎日だった。
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あの日からアイツは家から消え、変わりに母さんの母さんが田舎の新潟からやってきた。相談所から戻り、玄関のドアを開ける。
母さんがお正月に作ってくれたお雑煮の匂いがした。「惇ちゃん、お帰りなさい。いま、フジ子さんがおいしい大根汁を作ったから、今夜は餅を煮て食べようね」
フジ子さんはお祖母ちゃんだけれども、本人がお婆ちゃんを連想させる呼び名はいやだと言うからそう呼んでいる。
たぶん、母さんが生きていて歳をとったらこんな感じかなと思うくらい、よく似たフジ子さんが出迎えてくれた。 <続く>
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