SSブログ

☆エッセイ「耳の中の妖精」

耳の中の妖精 (五) 芹香ママ

目が覚めると異変に気づく。部屋が左右にゆれ、吐き気がして立ち上がることもできない。息も絶えだえに這いつくばって、隣の部屋に辿りつき主人を揺り起こした。日曜日の朝のことだった。

早速、救急当番医を受診。検査の結果は左右の耳の聞こえの差、三半規管でバランス違いがめまいの原因だと診断された。二時間ほどの点滴処置で無事帰宅できたのである。

そういえば一年ほど前からか、右耳に時々耳鳴りを感じた。最近は多少強くなったようだ。『父ちゃんのためならエーンヤ・コーラ。子供のためなら・・・』 美輪が歌うあのヨイトマケの唄に似た音だ。

七十才を過ぎたころ、ジョギングのやり過ぎからなのか、膝も痛み始めた。整形で骨粗しょう症といわれ、メガネなしで読めた新聞も近頃ボケてきた、眼科では加齢黄斑症と診断された。

今は 「冬ソナ」 でお馴染み、ペ・ヨンジュンが宣伝するメーカーの老眼鏡のお世話になっている。今さらながら、「微笑みの貴公子」 魅力に取り疲れている次第である。

最近、声もかすれだし、歌をうたうことも億劫になった。NHKの 『ためしてガッテン』 によれば、これも加齢からくるものだと言う。

医療機関は、老人たちには 『老化』 が原因とは言わない。多少ごまかし気味にもとれる 『加齢』 と表現する。ジョークのような話だが、ある病院の待合室でのお年寄りの会話。

『何ですかねえー、カレイ(鰈)とかカレーってどういうことですか?』

西洋の格言に 「幸せは気づかぬうちに、ひとつずつやってくるが、不幸は群れになってやってくる」 とある。体の衰えも束になってやってきたのだと、身をもって実感した昨今である。

あの夜、妖精たちが話していたことは、幻想か妄想のようだったが、このあとも続くかもしれないという。それもまた、楽しみの一つと考えよう。 <おわり>
----------
芹香ママのエッセイは、暫くお休みにします。来週からは、元川芹香さんが、「モズの穴」で再登場します。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。