☆ 「モズの穴」
もずの穴(21) 元川 芹香
翌朝、ボクは卵かけごはんを食べながら、新聞を読んでいるジージに聞いた。「ジージ。龍の住む池ってどうやって行けばいいの?」
「青龍ヶ池か?八木森神社の裏山の道を歩いて行けばすぐ着くよ。三十分位かな。一緒に行くか?」 ジージは、老眼鏡の隙間からチラリとぼくを見た。「ううん。昨日知り合った友達と行くからいいよ」
「そうか。もう友達できたのか。一本道でちょっと狭いが車も通れる道だ。それに、所々青龍ヶ池行きの矢印標識もあるから迷う事もないだろう。友達ってどこの子だ?」
「神社の子」 「ふ~ん。神主の孫か?惇と同じくらいの子供がいたとは初耳だ。地元の子と一緒に行くんであれば大丈夫だな」 ジージはまた新聞をめくり始めた。
黙って話を聞いていたフジ子さんがお茶を入れている。何にも言わないのはとても不気味だ。「フジ子さん。また味噌おにぎり作ってくれる?」
「それはいいけど…、絶対池とかに入っちゃダメたからね。それと、道からそれて山の奥に入ってもダメ、蛇とかいるんだからね。探検なんて言わなきゃよかったわ」 なんだ、心配してくれていたのか。
「わかった!」 ボクは嘘をついてしまった。でも、一人で行くなんていったら、絶対許してもらえないし、あんなに怒った山猿は、今更謝ったところでついて着てはくれないだろう。
フジ子さんは二人分のおにぎりと、麦茶入りの水筒が入ったリュックをぼくに背負わせた。それから、「お守りよ」 と大きな鈴のついた小さな赤い袋をくくり付ける。念のための、熊よけの鈴だそうだ。
「日が暮れる前に帰ってくるのよ」 フジ子さんは、不安そうにぼくのお尻を叩く。「ほらっ」 ジージは、手書きの地図をボクにくれた。 <続く>
翌朝、ボクは卵かけごはんを食べながら、新聞を読んでいるジージに聞いた。「ジージ。龍の住む池ってどうやって行けばいいの?」
「青龍ヶ池か?八木森神社の裏山の道を歩いて行けばすぐ着くよ。三十分位かな。一緒に行くか?」 ジージは、老眼鏡の隙間からチラリとぼくを見た。「ううん。昨日知り合った友達と行くからいいよ」
「そうか。もう友達できたのか。一本道でちょっと狭いが車も通れる道だ。それに、所々青龍ヶ池行きの矢印標識もあるから迷う事もないだろう。友達ってどこの子だ?」
「神社の子」 「ふ~ん。神主の孫か?惇と同じくらいの子供がいたとは初耳だ。地元の子と一緒に行くんであれば大丈夫だな」 ジージはまた新聞をめくり始めた。
黙って話を聞いていたフジ子さんがお茶を入れている。何にも言わないのはとても不気味だ。「フジ子さん。また味噌おにぎり作ってくれる?」
「それはいいけど…、絶対池とかに入っちゃダメたからね。それと、道からそれて山の奥に入ってもダメ、蛇とかいるんだからね。探検なんて言わなきゃよかったわ」 なんだ、心配してくれていたのか。
「わかった!」 ボクは嘘をついてしまった。でも、一人で行くなんていったら、絶対許してもらえないし、あんなに怒った山猿は、今更謝ったところでついて着てはくれないだろう。
フジ子さんは二人分のおにぎりと、麦茶入りの水筒が入ったリュックをぼくに背負わせた。それから、「お守りよ」 と大きな鈴のついた小さな赤い袋をくくり付ける。念のための、熊よけの鈴だそうだ。
「日が暮れる前に帰ってくるのよ」 フジ子さんは、不安そうにぼくのお尻を叩く。「ほらっ」 ジージは、手書きの地図をボクにくれた。 <続く>
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