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☆「モズの穴」

もずの穴(17) 元川 芹香

しゃがみ込んでボクは胸に手を置く。「白チンそんな所で何してんだ?」 その声で顔を上げると、境内であの山猿が胡坐をかいて何かを食べていた。「オマエ、そんなにオレに会いたかったか?」

「はぁー、はぁー、違うよ。昨日この神社を見損なったから来たんだよ。はぁー、山猿こそ、学校はどうしたの?さてはずる休み?はぁー」 ボクは上目づかいに山猿を見て言った。

「白チンに言われたくないな!創立記念日だ」 「はぁーどうなんだか。始業式の次の日が創立記念日?それに、その割には子供の姿見かけないな。まぁ、ぼくにはどうだっていい話だけどさ」

あれ?不思議と呼吸が楽になっている…。「なら初めから聞くな。ちょうどいい、この神社の説明してやるよ」 山猿は境内からぴょんと飛び降りてきた。

「あとから、ガイド料よこせって言ってこない?」 「オマエはどこまでもひねくれた人間だな。そんなみみっちい真似はしない」

「じゃあ、お言葉に甘えてお願いします」 「素直な白チンなんて、気持ち悪ぅ~」 「もう、どっちなんだ!」 ボクたちはケラケラ笑った。

「ほれ、これうまいぞ」 山猿は紫色の小さな実が沢山ついた小枝をぼくに差し出した。「これはなに?」 「桑の実だ。こんなもの食ったことねーだろ?」

山猿がそれは旨そうに頬張るものだから、疑うこともなく一粒もぎ取り口の中に入れた。「うん美味しい!やっぱり。君は山猿だね」 「またバカにしやがって。オマエ、オレをチビだとも思ってるだろ?」

山猿は急に怒り出した。彼のコンプレックスはチビであるようだ。自爆するほどだから、そうとうなものなんだろうな。「ナァーニ、こんな美味しい実を知っていることに敬意を表したんだ」 <続く>

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