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☆エッセー 「桜の女(ひと)」

桜の女(ひと) (一) 作 芹香ママ

貴女 (あなた) は、桜がとても好きでしたね。

桜を題材に書いた詩や、短編小説はどれも昭和の初期のころの懐かしい気配を、女の情念の世界を見事に表現、私はすっかり魅せられてしまいました。

「佐野 雪」 というペンネームは、貴女が高校生の時に聞いたという 「花も雪も払えば清き袂かな、ほんに昔のことよ…」 と続く地唄に、心をそわせたからだそうですね。

「雪」 を舞う地唄舞 「武原はん」 の美しさに魅せられて付けた名だとか、あなたの作品 「雪」 の中に書いてありました。

花なら桔梗か、あやめ、色なら紫が似合うひと。豊かな髪を後ろで結い上げ、面差し白く涼やかに、着物は少し着くずして、帯は下目にゆるく巻いてきていましたよね。

羅 (うすもの) をゆるくまといて立ちしひと  (芹香ママ)

学生時代は、文学少女として校内では認められていましたね。あれから五十年の歳月を経って、偶然の出逢いから始まった五年余りの交友でした。

小説や詩の話、人生、宗教と話題はつきず時間の過ぎることの早かったこと。あなたが逝く前の年に出版した 「ひとへ」 と題した小さな詩集。わたしには何か予感めいたものがありました。
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