☆いもうと
いもうと (1) 作 元川 芹香
今でもはっきりと、脳裏に焼き付いている。夏のおわりのある朝のこと、母がまるで玩具を取り上げられた子供のように三面鏡の前で泣きじゃくっていた。
当時5才だった私には、何時もの母とはまったく別人の様に思えた。そばに寄ることすら出来ず、ただ呆然とそのあり様を見ていた。
生まれたばかりの妹は、母方の伯父夫婦の養女として、この日引き渡されたのだ。伯父夫婦には子供が授からず、家業を手広く経営していたため、何としても跡継ぎが欲しかった。
そんな時期に母が3度目の妊娠。血縁を強く望んでいた祖父と伯父の懇願の末、出産前に養女に出す事を約束してしまったらしい。
とは言え、いざ腹を痛めた我が子に乳を与えわずか数日かでも共に過ごせば、手放すことなどできるはずもなく。気が狂わんばかりに泣く母の心情など知る由もなく…。伯父に抱かれ、その日我が家を後にした。 <つづく>
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この 「いもうと」 は、2014/ 8/ 5から12/23まで連載した 「縺れた綾糸」 の姉妹編ともいうべき掌編小説です。前作はノンフィクションでしたが、この作品は、そうでない部分も随所に見受けられるます。
今でもはっきりと、脳裏に焼き付いている。夏のおわりのある朝のこと、母がまるで玩具を取り上げられた子供のように三面鏡の前で泣きじゃくっていた。
当時5才だった私には、何時もの母とはまったく別人の様に思えた。そばに寄ることすら出来ず、ただ呆然とそのあり様を見ていた。
生まれたばかりの妹は、母方の伯父夫婦の養女として、この日引き渡されたのだ。伯父夫婦には子供が授からず、家業を手広く経営していたため、何としても跡継ぎが欲しかった。
そんな時期に母が3度目の妊娠。血縁を強く望んでいた祖父と伯父の懇願の末、出産前に養女に出す事を約束してしまったらしい。
とは言え、いざ腹を痛めた我が子に乳を与えわずか数日かでも共に過ごせば、手放すことなどできるはずもなく。気が狂わんばかりに泣く母の心情など知る由もなく…。伯父に抱かれ、その日我が家を後にした。 <つづく>
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この 「いもうと」 は、2014/ 8/ 5から12/23まで連載した 「縺れた綾糸」 の姉妹編ともいうべき掌編小説です。前作はノンフィクションでしたが、この作品は、そうでない部分も随所に見受けられるます。
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