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☆コント -茗荷

「茗荷」 (4) 元川 芹香

お釈迦様はどうにかしようと、名前を書いた札を首から下げて覚えたという。弟子が死んだ後、その墓の周りに咲いた花を、弟子名に担って茗荷と名付けのだたという。「だっけに、いっぺ食べても物忘れしねよ」

「それを聞いて安心しました」 ユウジは汁の中に、どっさり茗荷をいれると、あっという間に俺の分まで平らげた。「おやこの人、腹痛もう忘れてしもたんだろっか」 婆さんはげらげら大笑いした。

帰り婆さんは、ユウジと俺にビニール袋いっぱいの茗荷を持っていけと渡した。車が少し進んだところで、ルームミラーに手を降って追いかけてくる婆さんが映った。

「きっと、金歯を取り返しにきたんですよ。ショウさん、逃げましょう!」 しかし、婆さんがまた来てくれと握った温もりの残る手がサイドブレーキを引いていた。

「ハァ ハァ… 間に合った間に合った。これも持っていけて」 パンパンに詰め込まれたトウモロコシや枝豆の袋を、婆さんは窓から車内に押し込んだ。それから見送ることもなく、腰に手を当てて戻って行った。

意味もなくアクセルを踏む。「ショウさん、オレ大変な物を忘れました」 また、急ブレーキをかけた。袋から茗荷が転がり落ち、ユウジがオロオロした様子で拾い集めている。

「なんだ、いきなり」 「いえ、アタッシュケースです」 茗荷は煩悩を忘れさせるともいう。長く続く山道。この先、何処に行くか分からない。けど、後戻りだけはやめようと茗荷の婆さんに誓った。 <終わり>
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私の故郷の方言を使いました、お分かりいただけたでしょうか?。来週からは、「幸の種」 だそうです。ご期待ください。芹香



タグ:コント 茗荷
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