☆コント -茗荷
「茗荷」 (3) 元川 芹香
トイレに閉じ込められたユウジ。ドアをノックすると、「ショウさん、勘弁してくださいよ。ここんちの便所和式ですよ」 とげっそりした顔で出て来た。
婆さんが持って来たのは、金の指輪が2つにネックレスが2本、そして金歯が5個だった。鞄から小さな計りを出させ、形ばかりの計量をすませた。
「かなりおまけして、15000円の買取りになります」 すぐにユウジに金を用意させ、婆さんに渡す。もちろん、市場価格の1/10程、濡れ手で粟のボロ儲けだ。
「あれま、こんなに貰えるんかね。ありがとね。ひょっこり来て、あんた福の神らね」 婆さんは袋を頭の上に掲げ、何度も頭を下げる。だんだん息苦しくなってきた。早く、立ち去らなくては。
「素麺しかねえけど、お昼食べていけて」 「ショウさん、朝から何も食って無いから助かりましたね」 ユウジのアホが、余計な口を挟んだ。何も食べてなければ、腹を下すこともなかろうが…。
婆さんは気付くこともなく台所へ経った。無理に帰ったら、かえって怪しまれそうだ。しかたなく、婆さんが運んで来た素麺を食べることした。山もりに盛られた茗荷の千切りを汁の中に入れるよう進められた。
「うちの母ちゃん、『茗荷は物忘れするから、沢山食っちゃダメ』 なんて言うです」 「それは昔噺だて。お釈迦様の弟子の一人が物忘れがひどく、自分の名前も忘れるくらいらったっての」 <つづく>
トイレに閉じ込められたユウジ。ドアをノックすると、「ショウさん、勘弁してくださいよ。ここんちの便所和式ですよ」 とげっそりした顔で出て来た。
婆さんが持って来たのは、金の指輪が2つにネックレスが2本、そして金歯が5個だった。鞄から小さな計りを出させ、形ばかりの計量をすませた。
「かなりおまけして、15000円の買取りになります」 すぐにユウジに金を用意させ、婆さんに渡す。もちろん、市場価格の1/10程、濡れ手で粟のボロ儲けだ。
「あれま、こんなに貰えるんかね。ありがとね。ひょっこり来て、あんた福の神らね」 婆さんは袋を頭の上に掲げ、何度も頭を下げる。だんだん息苦しくなってきた。早く、立ち去らなくては。
「素麺しかねえけど、お昼食べていけて」 「ショウさん、朝から何も食って無いから助かりましたね」 ユウジのアホが、余計な口を挟んだ。何も食べてなければ、腹を下すこともなかろうが…。
婆さんは気付くこともなく台所へ経った。無理に帰ったら、かえって怪しまれそうだ。しかたなく、婆さんが運んで来た素麺を食べることした。山もりに盛られた茗荷の千切りを汁の中に入れるよう進められた。
「うちの母ちゃん、『茗荷は物忘れするから、沢山食っちゃダメ』 なんて言うです」 「それは昔噺だて。お釈迦様の弟子の一人が物忘れがひどく、自分の名前も忘れるくらいらったっての」 <つづく>
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