☆コント -茗荷
「茗荷」 (1) 元川 芹香
高速道路を降り、国道沿いの衣料量販店に立ち寄る。白のポロシャツとチノパン2組を手にし、レジ待ちの列にならんだ。
スーツ姿の営業は、どうも警戒心を与えてしまうらしい。「ショウさん、儲かるバイトっていったいなんですか?」 隣にいたユウジが、進まぬ先にイライラしている。
「難しいことじゃない。俺の隣で愛想良く笑っていればいいさ」 今回はいち早く信頼を獲得するためにも、ラフな服装と暇そうな後輩を連れて回る。
俺の仕事は訪問買い取り。家庭で不要になった物を換金する。箪笥の肥やしやをきんカネにしてやるんだから、さしずめ俺は福の神。
なのに、都会では 『悪徳業者や押し買いに注意』 なんてチラシが撒かれ、門前払いの毎日だ。田舎ならば認知度も少なく、営業はしやすかろう。
車を走らせること一時間。人里離れた山道に古く大きな民家を見つけた。側道に車を止め、ユウジに黒いアタッシュケースを渡す。
「いいか、これからお前は会計係だ。鞄には仕事で必要な百万ばかりの金が入っている。俺が言った金額を袋に入れて客へ渡す、それが仕事だ」 <つづく>
高速道路を降り、国道沿いの衣料量販店に立ち寄る。白のポロシャツとチノパン2組を手にし、レジ待ちの列にならんだ。
スーツ姿の営業は、どうも警戒心を与えてしまうらしい。「ショウさん、儲かるバイトっていったいなんですか?」 隣にいたユウジが、進まぬ先にイライラしている。
「難しいことじゃない。俺の隣で愛想良く笑っていればいいさ」 今回はいち早く信頼を獲得するためにも、ラフな服装と暇そうな後輩を連れて回る。
俺の仕事は訪問買い取り。家庭で不要になった物を換金する。箪笥の肥やしやをきんカネにしてやるんだから、さしずめ俺は福の神。
なのに、都会では 『悪徳業者や押し買いに注意』 なんてチラシが撒かれ、門前払いの毎日だ。田舎ならば認知度も少なく、営業はしやすかろう。
車を走らせること一時間。人里離れた山道に古く大きな民家を見つけた。側道に車を止め、ユウジに黒いアタッシュケースを渡す。
「いいか、これからお前は会計係だ。鞄には仕事で必要な百万ばかりの金が入っている。俺が言った金額を袋に入れて客へ渡す、それが仕事だ」 <つづく>
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